足技でも超絶技巧を誇るJojo Mayerがデザインしたとあって巷で評判のSONOR Perfect Balance。いつかは使ってみたいと思っていたのですが、初期型の中古が安価で販売していたため購入しました。
いざ手にしてみると「アレー?」と首を傾げてしまうところがいくつかあります。そこで使い勝手がいいように色々と手を加えました。(すべてオリジナル状態に戻せる可逆的な改造です。)
折りたたみ機構
ボタンを押してポスト部を倒すとコンパクトになるという機構なのですが、ベース部とポスト部の間の関節が難ありで、折りたたみを繰り返すうちにガタつきが大きくなってしまうのです。
この赤矢印のボルトを締めてやればガタつきは減らせるのですが、緩み止め接着剤で固定されているために回すことができません。しかもこのボルトの六角穴がクセ者で、微妙に大きく出来ているので4mmの六角レンチがゆるく、力ずくで回したら穴をナメてしまう可能性大です。
なのでボルトをハンダごてで加熱して緩み止め接着剤を軟化させます。(緩み止め接着剤に含まれる熱硬化性樹脂は250℃で軟化します。)
この作業は注意が必要です。ボルトは30mmもあり、接着剤が付いているのはその先端なのでそこが250℃になるまで気長に熱を加え続ける必要がありますが、ネジ穴の周囲にはプラスティック製のパーツ(折りたたみ機構のロック解除ボタン)が嵌っているのでそれを溶かさない程度にとどめなければなりません。六角レンチで回るようになっていないかこまめに確認しながら加熱していきます。
ボルトが回るようになったらしっかり締めて折りたたみ機構を封印します。
折りたたみ機構を封印せず、キャップボルトを角頭ボルトに交換してチューニングキーで締まり具合を調整しながら折りたたみ機構を使い続けるのもアリです。
いずれにせよオリジナルの六角穴が大きいキャップボルトは交換しておいた方がいいでしょう。(キャップボルトのサイズはM6、30mm、低頭タイプです。)
フープクランプ機構の変更
折りたたみ機構はフープクランプ機構も兼ねているので封印するとバスドラムフープへの着脱が出来なくなります。
そこでフープの厚み調節用のボルトを外し、代わりに全長190mm程度のM8の全ネジを立てます。
全ネジの上端は角頭ボルトのように削ってチューニングキーで回せるようにします。
また全ネジはグラつかないように配線用のスパイラルチューブを被せ、ホットボンドでフレームに固定します。
これでバスドラムフープへの着脱が可能になります。
全ネジの加工が面倒という人には小振りのウィングナット(画像はヤマハの「U0123531」(ヤマハナット M8 ショウ))を緩み止め接着剤で固定してしまうという手もあります。(小振りのウィングナットでないとバスドラムヘッドと干渉する可能性があります。)
スプリングローラーのチューンナップ
Perfect Balance のスプリングローラーは摩擦ロスの大きい金属リングなので是非ともベアリングを適用したいところです。DW5000用のロッカーハブベアリングを用いるとCanopusのSpeed Master Bearingよりはるかに安価に済ませられます。
角頭ボルトにロッカーハブ、テンションボルト用ワッシャー、ロッカーハブ付属のワッシャーの順で通し、ビーターアングルカムに取り付けます。Perfect Balance のフックはベアリングの径に合わないのでDWのトライアングルフックに取り替えます。スプリング両端のフックの開閉にはスナップリングプライヤーを使うといいでしょう。
ベルトの交換
オリジナルのベルトはわずかに伸縮するためペダルの反応が良くありません。(現行モデルでは改良されたものが使われているようです。)
そこでダイソーのネックストラップに使われている幅15mmのPP(ポリプロピレン)ベルトを使って同じ長さのベルトを作ります。
左がオリジナルのベルト、右がPPベルトで作ったものです。PPベルトはほつれないように切り口をライターの火で炙って溶かします。穴あけはハンダごてを使うとほつれ防止にもなります。
PPベルトはやわらかくて丈夫なのでPerfect Balance に限らず、ヤマハやDWのベルトドライブペダルにも利用できます。
これで作業は終了・・・と思いきや、使ってみるとどうも動きがおかしいです。
主軸を回してみると擦れて回りにくい感じが伝わってきます。どうやら主軸のベアリングに赤矢印方向の圧を加えて組み立てられてしまったのが原因のようです。(軸方向のガタつきを抑えるためでしょうが、ベアリングに軸方向の圧を加えると摩擦が増加して回りが悪くなります。)
一旦バラして組み直せばいいのですが、Perfect Balance は至るところに緩み止め接着剤が使われているので分解が容易ではありません。
幸い圧がかかっているところに挟まっているワッシャーが樹脂製なのでこれを熱で軟化させたら圧を取り除けるはずです。
ヒートガンで加熱します。
予想通り、ストレスなく回るようになりました。
改造、チューンナップ完了後の動作状況です。
ビーターが止まるまでに振れる回数は40台後半なのでロスはかなり少なくなっています。
番外編
上ではスプリングローラーにDW5000のパーツを流用する方法を紹介しましたが、私自身はPerfect Balance の特徴的な外観を残したかったので外輪に溝を掘ったベアリングと超低頭キャップボルトを使ってオリジナルのフックを使えるようにしています。(使用ベアリング・・・NSK 696-H-ZZ [外径15mm、内径6mm、幅5mm])
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Weckllover Drums Laboratory ~ドラム研究所~
チューニング方法などドラムにまつわるあれこれを記しています。
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