リムショットの正体

スネアドラムで欠かせない2種類のリムショット、「オープン・リムショット」、「クローズド・リムショット」について、なぜあのようなサウンドが出るのかを誤解している人が多いようです。そこでこんな動画を作ってみました。


オープンリムショット

オープンリムショットはリム(フープ)を強打し、しかも桶を叩いたような「コーン」という残響の長い音がするので胴(シェル)やフープが鳴り響いていると勘違いしている人が多くいます。(ヘッドをミュートし、リムやシェルを叩けば鳴り響かない状態であることは容易にわかるはずなのですが。)


スティックでヘッドを叩けば低次から高次の倍音が発生するのですが、スティックを瞬時に返さないと波打つヘッドがスティックに触れて振動が止められてしまうのです。特に振幅の小さな高次の倍音はすぐに消えてしまいます。


それをリムを支点に叩くとスティックの返しが速くなってスティックとヘッドの接触時間が極めて短くなり、高次の倍音も消えず、音の立ち上がりも鋭いあのような音になるのです。(強打のときはスティックがしなってヘッドをはじいているということもあるかと思われます。)


あくまで鳴っているのはヘッドであり、フープやシェルが鳴り響いている音ではありません。


クローズド・リムショット

クローズド・リムショットもフープやシェルを鳴り響かせているわけではなく、フープに打ち付けられたスティックの響きがヘッドに伝わって共鳴しているのです。ブラジルの楽器「クイーカ」と同様の原理です。

クイーカはヘッドに竹ひごが括り付けられています。竹ひごを布でこすると振動が生じ、その振動がヘッドを共鳴させて動物が鳴いているかのような音が大きく出ます。

クローズドリムショットの鳴るポイント(スウィート・スポット)はヘッドやフープの位置が関係していると思っている人が多いですが、実際はスティックのどこをフープに打ち付けるかが重要なのです。スティックの端から1/4程度のところに振動の節があり、そこを打ちつけるとよく響いた音がするのです。


リムショットの仕組みがわかればフープの交換はあまり意味のないことだとわかる

ドラマーの間でスネアのサウンドを変えるためにフープを交換するなんて話がちょくちょく出てきます。雑誌の商品レビューや楽器店の商品紹介でも「ダイキャストフープはタイトな音」、「ウッドフープは耳に優しい音」なんて言葉が飛び交います。

ですが先に述べたようにリムショットはフープを鳴り響かせているわけではないのでプレスフープをダイキャストフープやウッドフープに換えたところで目に見えるような音色の変化が表れるわけではないのです。

下の動画は同じスネアにプレスフープとダイキャストフープをそれぞれ装着して叩いた音声です。


次はプレスフープとウッドフープです。

フープによってリム高が若干違うためにフープの交換によって打感が変わるということはありますが、サウンドの変化は期待できないことがこの音声からわかると思います。

フープを換えたら音が変わった、としている動画が散見されますが、そういった動画は一様に交換前後のチューニングピッチが違っています。そりゃチューニング変えりゃ音が変わるのは当たり前だろうとツッコミたくなります(笑)。

ドラム界には単なる個人の思い込みが広く伝播し、あたかも客観的事実のようになってしまっていることが非常に多いので注意が必要です。

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Weckllover Drums Laboratory ~ドラム研究所~

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