スネアのシェル材と音色について

[スチール(YSS1450AJ)とアルミニウム(LM404LTD)の比較]


スネアのシェル(胴)には主に木あるいは金属が用いられます。木としてはメイプル、バーチ、ビーチ、オーク等様々な木種が使われますが、金属もスチール、ブラス、アルミ、ブロンズ、銅などのバリエーションがあります。

そしてシェルに使われている金属によって音色は違うと巷ではよく言われます。例えばスチールは倍音の多い荒い音、ブラスは低音が響く音、アルミは明るい音など。けれども自分の経験ではそのような音色の違いを実感したことがありません。そこでスネアのシェルに使われる金属の違いによって本当にそのような音色の違いがあるのかを検証しようと思い立ちました。

ところが手元にある金属胴スネアはサイズがバラバラ、同じサイズものがありません。

そこへちょうどヤマハから日本を代表するプロドラマー神保彰シグネチャーの新しい金属胴スネアが発売というニュースが入ってきました(2015年5月時点)。スペックはスチールシェルで14x5インチ。しかも最近の風潮に従って試奏動画が公開されているではありませんか。音も非常にクリア!

そこで手元にあるLM404(14x5インチ)に同じチューニングを施して音色比較にトライしてみました。


比較に使ったモデルの仕様、録音方法

YSS1450AJ "The Metal”

シェル素材は1.0mmのスチール。ウエブサイトの写真の一枚にちょうどつなぎ目が写っており、最近のヤマハのメタルスネア同様一枚の板を曲げて溶接したシームドシェルであることがわかります。フープは1.6mmの薄いスチール製プレスフープで10ホール、ヘッドは打面がレモ、アンバサダーコーテッド(厚さ10mil、1プライ)、スネアサイドはレモ、アンバサダースネア(厚さ3mil)、スナッピーはスチールコイルの20本タイプと仕様表にあります。

録音に使っているマイクはSHUREのSM57。フープ上1インチ程度の位置にセットされています。音声を聴くとマイクはこの一本だけでリバーブなどの加工はされていないようです。


LM404LTD

使用したLM404は2012年に発売されたオリジナル仕様での再生産モデルで、サンドブラストしたパーツを使用した限定バージョンです。シェルはアルミニウム、フープは2.3mm、8ホールのスチール製プレスフープ、ヘッドは打面がレモ、アンバサダーコーテッド(厚さ10mil、1プライ)、スネアサイドはラディック、ウエザーマスター(厚さ3mil)、スナッピーはスチールコイルの20本タイプとなっています。

録音にはYESS1450AJ同様にSHURE SM57をセットして行いました。

チューニングのピッチが違うと音色は大きく異なり比較にならないため、YSS1450AJの音声を分析しほぼ同じチューニングをLM404LTDに施しました。(打面321Hz、スネアサイド359Hz、いずれもtune-botでチューニングするときに用いる倍音値です。)


結果

比較しやすいように連続した音声ファイルにしました。前半がYSS1450AJ(ウエブサイトの動画から拝借した神保氏本人演奏の音声)、後半がLM404LTD(お粗末ながら私が叩きました(笑))です。

YSS1450AJの音声がマスタリング時に施されたイコライジングまでは真似できないのでLM404LTDの音声とはトーンが若干違います。ですが本質的な音色はかなり似通っているように聞こえます。

さらに目でも比較できるよう音声を周波数解析してみました。

左側がYSS1450AJ、右側がLM404LTDです。縦軸が周波数、横軸が時間で縦方向の線香花火のような模様1本が1打に相当します。左右の模様が似ていればすなわち音色が似ているということなのですが、同一のスネアの音でないかと思われるくらい解析像は似ています。


総括

やはり世間で言われているようなシェル材ごとの音色の特徴というものは懐疑的に捕えたほうがよいようです。

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