フットペダル Pearl P-930/NI のチューンナップ&カスタマイズ

Pearl P-930/NI

実売1万円を切る価格にもかかわらずパールの上位モデル、Eliminator Demon P-3000 に遜色ない軽快なアクションで評価の高いDemon Style シリーズのP-930。2016年秋まで生産されていた限定バージョンの P-930/NI はそれをさらにブラッシュアップしてフリクションを減らしたモデルですが、P-930/NIにはまだいくつかの問題点があります。今回それらを改善することでさらに快適なペダルに仕立てようと試みました。


ヒンジ部

フットボードからチェーンを外してフットボードを大きく上下させると動きがとても固いことに気づきます。

アンダープレートからフットボードを外し、水平にしてもヒールパーツが画像上のように固まって動かないのです。本来は自重で画像下のように下がらなければなりません。

原因の1つはヒールパーツとフットボードの隣接する面の精度不良です。

これを改善するべく、まずフットボードとヒールプレートを分解します。ヒンジの軸はヒールプレートの横から打ち込んであるローレットピンです。3mmのピンポンチ(ホームセンターで数百円で買えます)をあてがい、ハンマーで叩いて抜きます。

分解した所です。

精度不良とは本来平面であるべき矢印のところが一部盛り上がっているため、回転するフットボードと干渉するのです。

盛り上がっているところを削ります。(中にはバリとしてすでに削られている個体もあります。)

ヒンジが固いもうひとつの理由がこの黒い樹脂製ブッシュです。フットボード側の穴にしっかり固定されるように突起をつけてきつくしてあるのですが、そのためにはめ込むと内径が小さくなってしまい、ヒンジの軸をしめつけてしまうのです。

この突起部分にカッターナイフの刃を垂直に当てて横に滑らし、カンナのように表面を薄く削いでいきます。穴に入りやすくなり、ローレットピンを通したときに締め付け感がなくなればOKです。(ちょっと表面を削るだけで充分です。低い部分と同じになるまで削ってはダメです。)

この2つの作業でヒンジはスムーズに動くようになります。(フットボードは若干左右に遊びができます。)

再びパーツを組んでローレットピンをプラスチックハンマーで打ち込みます。(画像ではドラムスティックを切ったものを当て木にしてメタルハンマーで叩いています。)

ベアリングの芯出し

P-930 や Eliminator Demon のようにシャフトが片側支持の場合、2個のベアリングの位置が近いため、わずかな芯ずれ(軸の回転中心とベアリングの中心がずれていること)でもスムーズな回転を妨げます。

芯出し作業のためにヘキサゴナル・アクスル・シャフト(シャフト)とベアリングを外していきます。

まずはユニロック・フットボード・アングル・カムをドラムキーで外します。

その下のアクスル・スリーブは矢印の2本のアレン・スクリュー(いもねじ)をペダルに付属してくる六角レンチで緩めると外せます。

シャフトが出てきました。

シャフトにはいもねじの傷が2ヵ所付いていますが、ベアリング側の傷(赤矢印)の盛り上がりを削らないとベアリングが引っかかって取れないことがあります。

また、シャフトが太めでベアリングを圧入している個体もあり、その場合は青矢印の方向からプラスチックハンマーなどでインパクトを加えて外します。

パールの現行のフットペダルに使われているベアリングは「608ZZ」(内径8mm、外径22mm、幅7mm、両側鋼板シールド形)というJIS規格のものです。(ヤマハの現行モデルも同じです。)

ペダルに現在使われているベアリング内にコンパウンドが混入するといけないので、別に用意した608ZZのベアリング(他のペダルで使い古したもの)をシャフトにホットボンドで固定します。(ベアリングの外輪が回らないようシールド部分までホットボンドをつけます。)

ペダルポストに片方だけベアリング(ペダルに使われているもの)を挿入し、そこにこのベアリングを固定したシャフトを通します。そしてベアリングの外周、側面に粗目のコンパウンド(ホルツ社の自動車補修用を使いました)を塗布します。

ベアリングをペダルポストのベアリングの穴の奥まで挿入し、シャフトが360度均一に回るようになるまで(特に引っかかる所がなくなるまで)手で回して研磨します。(せいぜい10回転位で十分です。) ベアリングに使われている金属に比べ、ペダルポストは大層やわらかいため(アルミ製)穴の方が削れるという原理です。

ペダルポストのコンパウンドを洗い流し、もう一方のベアリング穴についても同様の作業をします。

両穴とも作業が終わったらコンパウンドをしっかり洗い流し、再びパーツを組みなおして完了です。


おまけカスタマイズ

P-3000やP-930のペダルポストはシンメトリーに作られており、かつアンダープレートもレフティモデル兼用に穴開けされているのでこのように左側に付け替えることができます。(ビーターホルダーやカムも逆向きに付け替えます。)

ですがシャフトの短さからそのままではビーターホルダーはカムの左側に付けることになってしまうので10mmほど長いP-932の右側用シャフト【パーツ品番SM-064】に交換し、ビーターホルダーを何とかカム右側につけました。

何とかというのは10mm長くても2mmほど足りないのでビーターホルダーがはみ出してしまっているからです。(強度的には問題ありません。)

ペダルポストを左側に付けるとジョジョ・メイヤーのような右前方につま先を蹴り出す奏法が可能になります。(そもそもP-930を買ったのはこれがやりたかったためです。)

またP-930のフープクランプは支点がクランプ寄りにあり、締めボルトから離れているためボルトをたくさん回してもクランプの開閉量が小さいです。それを解消するためにP-3000用のフープクランプレバーを取り付けました。(【パーツ品番DC-399D】 取り付けのためにアンダープレートにφ5mmx4箇所の穴開けが必要です。) フープクランプバーの裏面は平面ではなく『コ』の字形断面なので縁がレバーに干渉します。そのため矢印のところをルーターなどで削ります。

フープクランプレバーを取りつけると締めボルトの回転量に対しフープクランプバーの上がる量が大きくなるのでどんなフープでも素早くしっかりクランプできるようになります。

フープクランプレバーは通常ペダルの右側に斜め向きで取り付けるのですが、いろいろな奏法の妨げにならない位置を探してこの位置になりました。


成果のほどは?

チューンナップ後の動作具合はこんな感じです。

ビーターが止まるまでの振動回数はチューンナップ前の35回から50回へと5割近く向上しました。

もっともフリクションがさらに減ったからといって演奏性が格段に向上するわけではありませんが・・・。

ちなみにCanopusのSpeed Star ベアリング+ベアリングカスタマイズ後のDW5000はこんな感じです。

P-930 と P-930/NI を比較した動画もあります。(この動画のP-930は動きが悪すぎるような気がします。)

このチューンナップはNiNjAバージョンでないノーマルのP-930やツインペダルのP-932でも可能です。

DIYに自信のある方はトライしてみてください。

0コメント

  • 1000 / 1000

Weckllover Drums Laboratory ~ドラム研究所~

チューニング方法などドラムにまつわるあれこれを記しています。