ドラムのチューニングについて【スネア編】

CDを聴いたりYouTubeの動画を見ていて

『このスネアいい音だな』

と思ったことはありませんか?

そして自分のスネアをいじってその音を再現しようと試みたことはありませんか?

でもヘッドやスナッピー、フープまで換えてみたけどどうも違う、と頓挫したりしてませんか?

果ては『あのプレイヤーはあのメーカーのあのモデルを使っているからあの音が出せるんだ』などと思い込み、大枚叩いて同じモデルを買ったりしていませんか?

ちょっと待った!

あなたはスネアの性質をちゃんと理解していますか?

スネアはちょっとヘッドのチューニングを変えただけですごく音色が変わるものです。

だから自分の所持しているスネアでもチューニング次第であの憧れのスネアの音に結構似せることが出来るのです。

そのためのノウハウがあるのですが、これまでは使えるドラムチューナーというものがなかったのでチューニング方法を正確にかつ具体的に伝える方法がありませんでした。ですから色々な書物やウエブサイトに記されているチューニング方法を読んでも「感覚的」にしか書いていないので、初心者にはとても理解、再現できるものではありませんでした。

ところが近年、tune-botというドラムチューナーの登場によって「感覚的」ではなく「絶対的」なチューニング方法の伝達ができるようになりました。そこでスネアのチューニングで悩んでいる人のために、tune-botを用いて再現可能かつ具体的なチューニング方法について紹介します。


ローピッチ、ミディアムピッチ、ハイピッチってどれくらい?

「ローピッチ、ミディアムピッチ、ハイピッチのスネアってそれぞれどんな音?」と聞かれれば

ローピッチは「ドスドス」

ミディアムピッチは「タンタン」

ハイピッチは「カンカン」

という答えが一般的には返ってくると思います。

では、それぞれのピッチにチューニングするにはどれくらいの強さでヘッドを張ればいいんでしょうか?

『ハイピッチはヘッドを指で押しても凹まないくらい』

……指ぢからは人それぞれですよね。

『テンションボルトが回せなくなるくらい』

……テンションボルトまわりのメンテナンスの悪いスネアなら容易に回らなくなります。

そんなアバウトな表現されても再現できませんよね。その点、tune-botがあれば張り具合を正確に数値で伝えることが出来るんです。

ローピッチなら打面ヘッドを

260~280Hzに

ミディアムピッチは

290~330Hzに

ハイピッチは

340~390Hz

超ハイピッチは

400~450Hz

に張ればいいんです。


ヘッドの張り方【準備編】

最近のドラムシェルやフープ、ヘッドは精度が高くなっていますがそれでもメーカーやモデルごとに微妙な寸法の違いがあり、ドラムシェルとヘッドのサッシ、ヘッドのサッシとフープ の間に遊びが生じることがあります。その遊びは円周上に均等に配分してシェルとヘッド、フープを同心円に配置しないとヘッドを最大限に発音させるチューニングはできません。(スネアのシェル、フープ、ヘッドの組み合わせによっては遊びが少なく、アバウトに張っていってもきちんと同心円に並ぶことがあります。特にエバンスのヘッドの「LEVEL360」という仕様はシェルのベアリングエッジへの「据わり」がとてもよくなっています。)

シェル、ヘッド、フープを同心円に並べる方法についてはこちら↓の動画を参照してください。村上敦宏氏がその手順を紹介しています。(27分頃から)

テンションボルトを対角線で締めるのはヘッドを張る過程でこの「同心円」を崩さない配慮です。


ヘッドの張り方【本編】

残響の短いスネアでも的確にピッチを計測できるチューナーは今のところtune-botしかありません(スマホ用アプリはいくつかあるようですがtune-botと同様に使えるかどうかは確認できていません。)。持っていない人は手に入れ、こちらの動画で使い方を学んでください。

まずスネアを座布団の上などに置いてスネアサイドヘッドを完全にミュートした状態にします(手で裏面のヘッドに触れる程度では足りません)。そして打面ヘッドのテンションボルト付近(1~3cm)を叩いて(*)その倍音のピッチがどのテンションボルト付近でも同じになるように張っていきます。均等に張ることはヘッドをしっかり振動させるために一番重要なことです。それをあえて崩すといい音になるなどと言う人がいますがそれは誤りです。そんなチューニングをすれば太鼓は鳴りませんし、何より叩く場所によってピッチが変わるということほど気持ちの悪いことはありません。

望むピッチまでまだ遠い場合、一箇所のテンションボルトのみを大きく回すことは避けましょう。『同心円』が崩れます。せいぜい90度まで。対角線で締めていくルールも守りましょう。

tune-botの使い方動画では一箇所にtune-botを固定したまますべてのテンションボルトのチューニングを行っていますが、微調整をする段階になったら調整するテンションボルトのそばにtune-botを移して計測しましょう。離れていると誤差が生じます。また叩く位置とtune-botの位置関係も等しく。叩く位置の右側と左側で測るのでは計測値が異なることがあります。

ピッチの誤差がプラスマイナス0.5Hz以内に収まれば完了です。

スネアサイドヘッドも同様にチューニングします。スネアサイドではスナッピーがチューニングの邪魔になるのでスナッピーを外すか、スナッピーのテンションをゆるゆるに緩めてフープとスナッピーの間にスティックをはさみ、スナッピーがヘッドに触れないようにします。最近のスネアのストレイナーにはスナッピーを簡単に外せる機構のついたものがありますが、こういうときに役に立ちますね。

スネアベッドがあろうがなかろうが、浅かろうが深かろうが打面ヘッドと同じようにテンションボルト付近の倍音を等しくチューニングする手技は同じです。

(*)tune-botの使い方動画ではチューニングにスティックを用いていますが、新品のヘッドが演奏前に傷だらけになるのは気持ちよくないですし、安定した倍音を出すためにもマレットを使いましょう。(マレットならベアリングエッジを傷めることもありません。)


打面ヘッドとスネアサイドヘッドの関係

前項でヘッドの張り方を説明しましたが、次はヘッドをどのピッチ(tune-botで使われるヘッドの外周から出る倍音の周波数)に合わせればよいのかという話です。

タムの音色は基音(周波数が一番低い倍音)がメインです。基音は打面ヘッドのピッチと裏ヘッドのピッチに相関があります。例えば打面ヘッドのピッチが150Hz、裏ヘッドのピッチが200Hzの時の基音と、打面ヘッドが105Hz(150Hzから3割減)、裏ヘッド260Hz(200Hzの3割増)の時の基音はほぼ同じになります。(すなわちほぼ同じ音色になります。)

一方スネアの音色は打面ヘッドから出る倍音がメインです。なので打面ヘッドのピッチによってほぼ音色が決まってしまいます。ですから先に述べたようにローピッチにしたければ打面ヘッドの外周から出る倍音の周波数を260~280Hzに、ミディアムピッチなら290~330Hz、ハイピッチなら340~390Hzに設定してチューニングすればよいのです。

スネアの音色がほぼ打面ヘッドのピッチで決まってしまうからといってスネアサイドヘッドのピッチは何でもいいという訳ではありません。基音が低すぎるとローピッチの場合、倍音の残響が長く耳障りになったりレコーディングすると再生環境によってスネアの音色が変わりやすいので基音は低くても190Hz程度にとどめておいた方がいいようです。(打面が260Hz程度のローピッチだったらスネアサイドは高めの350Hz以上にすると基音は190Hz以上になります。)

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最後に様々なピッチでチューニングしたサンプル音を作ったので聴いてみてください。(便宜的に上下ヘッドのピッチは等しくしてあります。)

使用スネア・・・・・・・・・Ludwig LM404 Acrolite 14"x5"

打面ヘッド・・・・・・・・・・REMO ambassador coated (10mil)

スネアサイドヘッド・・・Ludwig Weather Master (3mil)

各音源とも

  スナッピーOFF → スナッピーON (マフリングなし) → スナッピーON (リングマフラー使用)

の順になっています。

 

①上下とも262Hz

②上下とも278Hz

③上下とも295Hz

④上下とも312Hz

⑤上下とも331Hz

⑥上下とも350Hz

⑦上下とも371Hz

⑧上下とも393Hz

リングマフラーは幅2cmの薄手のものですが、倍音が整理され、残響が短くなると同時にアタックの弱いぼやけた音になっているのがわかると思います。スネアの倍音はアンサンブルの中では他の楽器に埋もれて意外と聞こえなくなるないものです。マフリングは極力控えめにすることが肝要です。


まとめ

1台のスネアでもチューニングピッチによってかなり音色が変わります。

他人のスネアの音を聴いてその音色はシェルの素材、メーカーによる違いだと思い込んでいる人がよくいますが、実は音色の違いのほとんどは打面ヘッドのチューニングとマフリング(ミュート)による倍音構成の違いです。ですから欲しい音色を求めてあれこれスネアを買い漁って散財するようなことはせず、手持ちのスネアでチューニングを徹底的にいじってみることです。その際には倍音によってどのようなピッチでヘッドを張っているのかがわからなくならないようにドラムチューナー(tune-bot)を必ず用いましょう。

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